廃棄物をエネルギーへ〜美しい地球であるために〜 廃棄物をエネルギーへ〜美しい地球であるために〜 廃棄物をエネルギーへ〜美しい地球であるために〜

廃棄物をエネルギーへ〜美しい地球であるために〜

今回取材へ向かったのは、壬生町にある、とある会社のR&Dセンター。中心市街地を通り抜けると、時の流れが少しゆっくりと感じられ、落ち着いた雰囲気が漂う。そんな街を進んで行くと、取材先である株式会社アクトリーのR&Dセンターが姿を見せてくれた。株式会社アクトリーは、民間事業者向け産業廃棄物焼却炉製造の国内トップメーカー。1971(昭和46)年に設立され、深刻な社会問題であった環境汚染を解決すべく歩み続け、従業員は140名を越す。石川県に本社、東京都に支店があり、2004(平成16)年には、栃木県壬生町にR&D センター、つまり研究開発の拠点が開設された。

アクトリーのウェブサイトには「100年後の地球も美しく」というメッセージが書かれている。そんなビジョンを掲げる企業のR&Dセンターを訪ねた。

歩み始めたR&Dセンター

今回、取材に対応してくださったのは副センター長の竹田道郎さんと、今年の春入社した若手社員の白鳥雄大さん。お二人とも、笑顔で温かく迎え入れてくださり、ご自身の体験から会社のビジョンまで、たくさんのお話を伺うことができた。

最初に竹田さんが、スライドを投影しながら事業内容のことなどを詳しく教えてくださった。R&Dセンターは次世代焼却炉の研究を目的に開設され、製造業・自動車産業等から排出される鉱物性廃油を回収・再生してつくられる再生重油の製造販売を開始した。2014年からは自社の製造する焼却炉を設置し事業を開始した。社員の平均年齢も若い。そんなR&Dセンターでは4つの機能を担っている。1つ目は、ごみを焼却した際に発生する熱を利用して発電するサーマルリサイクルシステムを通じた「エネルギー供給」。2つ目は、これから産業廃棄物の焼却炉導入を予定している業者の方などに、施設を実感・体感してもらう「ショールーム機能」。3つ目は、アクトリーの焼却炉ユーザーが施設点検や補修工事等により廃棄物を処理できない期間に一時的に受け入れて処理する「代替受入機能」。4つ目は、焼却炉から得られるエネルギーを利用した発電や、焼却困難な廃棄物の処理法研究等を行う「研究・開発機能」である。また、新たに廃棄物処理産業に参入する企業を支援するトレーニングセンターとしての面も兼ねそろえているそうだ。

なぜ栃木の壬生町に

4つの機能を中心に、環境分野での課題解決に貢献し続けるR&Dセンター。そもそもなぜ栃木県の壬生町に設置されたのだろうか。竹田さんに尋ねると「栃木県は北関東の交通の要衝でもあり、我々のお客様になってもらえる可能性のある会社が多数あります。皆様にアクトリーの焼却炉の良さをわかってもらえる場所、いわゆるショールームの立地としては最適だと判断して、ここに設置しました。」と理由を聞かせてくれた。

また、R&Dセンターは壬生町と災害時協力協定を結んでいる。地震、風水害などの大規模災害が発生した時に、応急・復旧活動を行政と民間企業が手を組んで行っていく協定で、R&Dセンターは焼却炉からの余熱を利用したお風呂を住民に開放するという内容だ。竹田さんは小山市に住んでおり、一昨年の水害で小山市の浄水場がダウンしてしまい、しばらく水道が止まるという事態があり、お風呂の大切さを痛感したという。

東日本大震災時の救世主

アクトリーは、また、東日本大震災により発生したがれきの撤去作業にて、第一線で活躍した会社でもある。被災地の宮城県内で震災廃棄物を処理するために設置された28基の焼却炉のうち、9基をアクトリーが請け負った。震災が起こった同年10月にはすでに第一基目のプラントを設置し、どこよりも早い対応を見せた。なぜこのようなことが可能なのか。それを実現させたのは、大手メーカーのように部品の製造を下請けに出すのではなく、自社で構成部品をつくれるという強みがあるからである。この取り組みは、お話ししてくださった竹田さん自身、誇りに思える出来事でもあったという。「アクトリーは工場内で炉の本体も造っています。炉の構成部分を自社で造るのは珍しくて、ほとんどの会社は外注しています。特に大規模なものだと海外製造の場合がほとんどで、船で運ばれて来ます。そのため、プラントメーカーはエンジニアリングに徹することが多いんです。確かに工場を自社で持ってしまうと、稼働率や効率は悪くなってしまう。しかし、自分たちの手で作ることを大切にしています。」自分たちで一からつくり上げる。ものづくりには大変な面もあるが、それはいざとなった時に大きな力となると感じた。

必要とされ続ける施設であるために

処理施設のイメージと言うと、一昔前まではイメージが良いものでなかったという。R&Dで初めて多数の一般の方の見学を受け入れた際のことを、竹田さんは「県民の方がバスで見学に来るとなると、どんな意見をもらうか、激しい意見をもらうのではないかと思っていたけれど、『よくここまでやっていますね。』といった激励の言葉を多くもらい安心しました。」と話してくれた。

その竹田さんの口調から感じたことは、始めは本当に不安でいっぱいだったが、実際に見てもらうことで直接激励の言葉をいただき、それが自社の存在意義を確かめることにも繋がったのではということだ。対面して顧客と向き合う。それがR&Dセンターとして大切にしている点とも言える。取材した約一週間後にも関東地方の某自治体団体が来るとお話ししてくださった。R&Dセンターは動き出してまだ3年の施設であるが、地域に受け入れてもらっている感覚があるそうだ。

実際にR&Dセンターで働いてみて

今年の春入社した白鳥さんにも、たくさんお話を聞かせていただいた。

まずなぜこの会社を選んだか尋ねてみると、「ゼミの先生からの紹介で知った。」という答えが返ってきた。それも一つの理由であるが、人が生活するうえで欠かせない業種であることを感じ、環境に力を入れている企業としても興味を持ったという。また、大学時代の専攻が化学工学ということもあり、専門分野とマッチすることから入社を決めたそうだ。入社してから感じたギャップについて聞いてみると、思った以上に汚れ、ハードな仕事だという答えが返ってきた。油や煤で作業着は汚れてしまうそうだが、そう話す白鳥さんの表情は明るかった。

入社1年目の今は、焼却炉のオペレーター実習に取り組んでいるという。わずかな誤操作も許されないという責任の大きさがあるが、そのような重要な仕事をしている点でやりがいも感じているという。

最近、仕事を通じて成長したと感じたことは、焼却炉のフロー図が頭に入ってきているおかげで、上司との会話がスムーズにできるようになった点だという。素人が見たら理解するのも一苦労な図が頭に入っているのだからすごい。今では、「ここをこのように繋げたらいいのでは。」といった話もできるほどのようだ。

白鳥さんは、入社して半年を経て「やりたいことの理屈がしっかりしていればそれをやらせてもらえる会社」だと感じているそうだ。社会に対して何ができるか、会社のビジョンが明快で、人数が少ない小規模な会社だからこそ、叶えられることもあるようだ。個人的な将来のビジョンを聞いてみると、「将来的には人に指示できる立場に成長していきたい。だからこそ今のうちにいろいろな人との関係構築に励みたい。」と意気込みを見せてくれた。

環境を守り、よりよい社会へ

100年後の地球も美しく…「環境創造会社」というビジョンを掲げる企業として、アクトリーは、廃棄物の焼却で得る熱エネルギーを中心に、「焼却施設=エネルギー供給センター」として位置付け、電気や温水を生み出し、植物や農産物の生産にも活用でき、住まいや暮らし、まちづくり全体にも貢献できるような循環の仕組みを「エコビレッジ構想」として提案している。取材の最後には、その実証実験施設を案内していただいた。焼却施設から引かれている温水がハウスに通され、温水タンクの中ではトラフグが泳ぎ、別のビニルハウスでは、とちおとめやトマトがすくすく育っていた。R&Dセンターが生み出している熱エネルギーで、2〜3ヘクタールほどの温室に熱を供給することが可能だという。

竹田さんは3年前にアクトリーに転職してR&Dセンターに赴任したが、当時は、エコビレッジ構想がまとめられてはいたものの、取り組みが進んでいたわけではなかったそうだ。地域の農家さんや、宇都宮大学の研究者たちの心強い協力があってここまで進んできたと言う。ただ、複数の農水産物を一度に作るのはやはり手がかかり難しさもあるようで、竹田さんは、「ちょっと欲張りすぎちゃったかな?」と苦笑いしながらハウスの中を案内してくださった。エコビレッジ構想は、環境に優しい循環型の未来都市を目指すと同時に、雇用創出もテーマの1つとしており、いずれは地域の農業、環境省や壬生町、宇都宮大学などと結んで経済圏を作り出したいと考えているという。

アクトリーが製造したプラントは、現在、北海道から沖縄まで日本全国200カ所で稼働している。中には離島に設置されているものもある。会社としては、今後、離島や僻地での展開にもさらに力を入れていきたいという。竹田さんは、「若者は、仕事がないと都会に出てしまいますね。農家の跡取りの若者たちも、エコビレッジ構想の実現を通して、自分の町や村に、農業をするために戻って来ることができるような、そんな環境が作れたらと思います。」とも話していた。会社のパンフレットにあった「環境創造」という言葉から、未来のイメージが膨らんでくる取材であった。

インタビュー・執筆
芹澤由佳|宇都宮大学国際学部国際社会学科4年

国際学部の私にとって、今回訪問したアクトリーさんのR&Dセンターで行われていることは全くの未知の分野でした。見ること聞くこと全てが少し難しく思うところはあったけれど、とても新鮮な思いでインタビューさせていただきました。会社に関するビデオを見せていただき、その後は質問に答えていただき、最後にはR&Dセンターの見学もさせていただきました。見学を通じて実際に廃棄物を燃やしているところや栽培しているトマト、宇都宮大学と連携して育てているトラフグなどを見ることができました。なかなかこういった現場を見させていただける機会はないので、社会科見学をしているような気持ちでした。見学の際中、作業している方に対して写真撮影の許可を取ろうと話しかけると快諾してくださったり、案内をしてくださった竹田さんと白鳥さんの対応も非常に丁寧で、社員さんの温かさに触れる機会ともなりました。このインタビューのおかげで、環境に対する関心が高まったように思います。素敵な出会いに感謝し、今後のアクトリーさんのご活躍に期待したいと思います。ありがとうございました。

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