「本当にやりたいこと」に素直に生きる 「本当にやりたいこと」に素直に生きる 「本当にやりたいこと」に素直に生きる

山や環境に興味があって宇都宮大学農学部森林科学科に入学した坂本さん。在学中はワンダーフォーゲル部に所属し、県内の山々を登山して楽しんでいました。坂本さんは、なぜ農学部を卒業し大工の道へ進んだのか。公務員志望の大学生が多い中、辛い修行を乗り越えて独立し、「悩みがあるって幸せなことだよね」と語る坂本さんに、学生時代や現在の仕事について聞いてきました。

「山」が1つのキーワード

僕は、進路を考えるとき、農学部の森林科学科に絞って大学を選んでいました。たまたま見つけたのが宇大です。正直特に「これがやりたい」というのがあったわけじゃなくて、山登りがしたい、山に関わりたい、山のことや環境のことを勉強したい...。そう思って宇大に進学を決めました。実際に入学して専門の勉強が始まると、森林科学科の講義では林業に関することが中心で、僕が期待していた環境問題はそれほど扱われることがなくて、あまり学問には身が入らず、3年生のころまではワンダーフォーゲル部の活動に没頭していました。ただ、あまり関心が持てなかった林業の講義のなかで、ひとつだけ心にひっかかったことがあります。「林業が産業として危機的状況にある」ということです。先生方が言っているのを度々聞いているうちに、いつのまにか、何とかしないといけない事だと思うようになっていました。しかし、その大きすぎるテーマに対し具体的に何が出来るのか分からず、ぼんやりと、卒業後は林業の役に立てるような仕事がしたいなと考えていました。そんな時、林業版の地産地消普及活動である「近くの山の木で家をつくる運動」を知り、これこそが林業を救うやり方だ!!と、直感でピンときました。直感と言うのは...、もともと僕は自分の直感に素直に従うタイプなんです。何か物事を決める時にはしっかり明確な理由をもっていたほうがよい、という人もいるとは思うのですが、人それぞれですよね。明確な理由がなくて、ただなんとなく...だとしても「これがやりたいな」と思ったことに素直になって、道を選んできました。そういう生き方もありなんじゃないかなと思うんです。直感から始まった「材木を生産する林業に対し、材木を使う建築の側から貢献したい!」という思いで、卒業後は大工になることを決めました。

軽い気持ちで声をかけて、辛い修行が始まった

大工になろうと決めたものの、どうしたら大工になれるのかなと思っていた時、友達に誘われて、烏山市で開催された木の家を作る工務店の完成見学会に参加したんです。そこに大卒の大工の方がいて、気軽な気持ちで「大工になりたいと思ってるんです」と話してみたら「来ていいよ」って。その何気ないやりとりで修業先が見つかり、親方の元での辛い修行生活が始まりました。自分にはここで一人前になる以外大工になる道がなかったので、必死で親方にくらいつて修業していました。修業も5年目になり、ある程度仕事ができるようになってきた頃、それまでも充分厳しかった親方が一層理不尽に厳しく、というより不機嫌になり、どうしても我慢できずに辞めてしまいました。後から考えると、僕を辞めさせるためにそういう雰囲気を作っていたのかもしれないですし、そうでないのかもしれないし...。ただ、親方に認めてもらうまで絶対に辞めちゃダメだと自分に課していたので、「もう辞めていいや」と思えた時には、なぜかほっとしましたよ(笑)。当時はそんな感じでしたけど、辞めた後に親方が自分を「一人前になった」って認めてくれたって、他の人から聞いたときはとても嬉しかったですね。独立してからは益子町に会社を構えて仕事をしています。

山や環境に興味があって宇都宮大学農学部森林科学科に入学した坂本さん

今ある選択肢からベストを選ぶ

何の仕事に就いたか、よりも、何がやりたいか、のほうが重要だと思います。同じ仕事に就いても、考え方ひとつですべてが違ってきますからね。例えば、役場の仕事をしていたとして、そこで与えられた仕事をただこなすのと、その町を盛り上げようとしてその仕事をするのだと、全く違う仕事ができるでしょう。やりたいことがある、ということが重要だと思うんです。「もっとこうならいいのに」なんてことを思うこともあるでしょうけど、それが選択肢の中に入れられなかったら、今ある選択肢の中でベストのものを選んで、やりたいことに近づければいいんじゃないかなって思うんです。自分自身の経験から言うと、やりたい事がしっくりこない時って、自分自身がけっこう形にこだわってるんじゃないかなって思いますね。

インタビュー・執筆
長田一輝|地域デザイン科学部社会基盤デザイン学科1年

お話してみて、物事にすごく集中して取り組む人だという印象を持ちました。また、結果を考えるのではなく、それまでの過程がどうであるかに重きを置いている人でした。インタビューの最後に、どの山の頂上が一番よかったかを尋ねてみましたが、「どの山も同じだ。」と答えていました。それは、「誰と登ったかが大事であって、ただ登ることが好きでやっていたわけではない」ということでした。進路に悩む学生へのアドバイスにおいても「どんな仕事になっても考え方ひとつで、人それぞれ違った仕事が可能である。」ということを教えていただきました。私はどの仕事に就くか、という結果ばかり気にしていたようです。私は、まず本当にやりたいことを在学中に見つけてみようと思います。そして、どんな結果になってもそのやりたいことをやって生きていくことができたら幸せなのではないか、と思いました。

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