母から女性たち、そして学生へ〜「誰かのため」が原動力に〜 母から女性たち、そして学生へ〜「誰かのため」が原動力に〜 母から女性たち、そして学生へ〜「誰かのため」が原動力に〜

宇都宮大学教育学研究科カリキュラム開発専攻を修了された社会人9年目の桑島英理佳さんは、宇都宮大学特任助教としてアクティブラーニングの啓発活動を主体にお仕事をされています。大学で授業を担当したり研究を進めながら地域活動の現場へも足を運び、講師として活躍されている桑島さんに、現在のお仕事のこと、それまでに至る背景、ご自身の学生時代を振り返っての宇大生へ向けたメッセージなど様々なお話をしていただきました。ご自身の学生時代を振り返っての宇大生へ向けたメッセージなど様々なお話をしていただきました。ご自身の学生時代を振り返っての宇大生へ向けたメッセージなど様々なお話をしていただきました。

“アクティブラーニング”を広める仕事とは?

アクティブラーニングってよく聞きますよね。従来は先生が一方的に専門的な話をして学生がメモをとるという形の授業が一般的であったけど、アクティブラーニングは学生自身がディスカッションしたり、自分自身で課題に取り組んだりするような、学生の主体的な学習を伴う授業をいいます。質疑応答から生まれる先生との対話も含まれるんだけど...、宇大の先生方へ、授業の中にちょっとした工夫をプラスしていきましょう、という提案を行っています。アクティブラーニングを学内で広めるための研究活動、啓発活動が、私の仕事の一番大きな目的で、色んなことをしているんですけど、1つがラーニングコモンズの管理・運営です。グループワークに適した机・椅子やホワイトボードなどの設備が充実していて、学生の自主的な学修のために24時間いつでも自由に利用できる学びの空間です。開設してから4年目に入るのかな。私は開設時から携わらせていただいているんだけど、お部屋の管理はもちろん、その中身としてのイベントの企画や運営も行なっています。

特に力を入れているのが、学生スタッフ制度で、去年から本格的にスタートさせているんだけど、より学生たちが親しみやすいコモンズになるように、受付の他にもニーズにあったようなイベントを企画してもらっています。最近では「旅人の生き様を知る」というタイトルで、休学して世界で一人旅をしてきた学生の話を聞くイベントを一緒に企画しました。こういったイベントは幅広い教養や課外学習の大切さ、そして学生同士の学び合いを伝えていくのが目的ですが、イベントを開催することで人の出入り・人と人とのコミュニケーションが活発化し、その結果コモンズも活発な雰囲気となっています。コモンズ内の飾りつけも学生が作ったものの方が学生の目をひくみたいです。あとは学生が受付することで話しかけやすい雰囲気になっていると聞きます。

他には、去年つくった「宇大コレクション」という本があるのだけど、大学の全学部の授業を見学してポイントをまとめて、アクティブラーニングをこんな風にやっていますよ、というのを一冊にまとめたものなの。全教員に配布しています。

それから「成人教育と参加型学習」という授業を受け持っていて、参加型学習はアクティブラーニングのことなんだけど、アクティブラーニングのどこがよいか、限界とか、なぜするのかとかを考えてもらう授業にしています。

もともと専門が成人教育なのだけど、成人教育は大人に教育する、というよりは大人が学びやすいように楽しみながら充実していくためのプロセスをお手伝いすることだと思っています。アクティブラーニングは大人が円滑に学んでいくために有効なんですよね。

自分の考えをしっかりいえるように、自分をより高めていくためには、お話をしたり、聞いたりというようなコミュニケーションが大切なんだけど、必ずしも学生みんながアクティブで、話し方も上手で、聞くこともできるというわけではないから、それを早い段階で楽しめるようになれば4年間充実するんじゃないかなって思っているの。だから、そういうコミュニケーションの取り方の気づきと、アクティブラーニングを絡めてすべての学部の学生さんに伝えて考えてもらえるように授業をしています。

仕事の大変さや面白さ

いまお話したようなことが、私の主な仕事の内容ですが、その中ではやはり大変なこともあります。例えば、最近ちょうど感じた、スタッフ間の関係性について。ミーティングはしっかりやっていたのだけど、意志疎通がとれなくて誤解を招くことがあって。ご飯を一緒に食べるとかちょっとした声かけとか、日頃のより細かいコミュニケーションは大事だと思います。

反対に最近すごく面白いなと思うのは、基盤教育に所属しているので色んな学部の先生方の授業を拝見することができて、私自身も授業の手法や工夫を取り入れられること。さらに他の先生へお伝えすることで、先生方にも参考にしていただけることがあると思うんです。お互いに学び合うことを支援できることが、私のやりがいになっています。

また、コモンズの学生スタッフさんたちの成長を見ることができるのも、やりがいに繋がっています。彼らがよりよいコモンズづくりに協力してくれるようにコーディネートさせてもらっているのだけど、自主的にコモンズが活発化するイベントを企画したり、動いてくれるのを見ていると嬉しいです。

宇都宮大学教育学研究科カリキュラム開発専攻を修了された社会人9年目の桑島英理佳さん

“社会教育”を学ぶきっかけ

大学院進学で宇都宮大に来たんですが、大学は東京で、学部では今の仕事の分野とはちょっと違うことを学んでいました。もともとは英語が好きで、英語を使った職業って教員くらいしか思い浮かばなくて、何となく教育学部に入ってきちゃったんです。教員になろうと思っていたんだけど、教職課程の他に社会教育主事課程というのがあって、履修すれば資格がもらえるというのがあったから私もとったのね。そうしたら、そっちの方が面白くなってしまったんです。

学校教育の中で教えなさいと言われたことに対して、そういうことじゃないんだよなって違和感があって。学校教育の場合は答えが決まっていたりするので、私は馴染めなかったんです。社会教育だと答えがなくてもいいから、自由に見えたの。なんかいいなあと思ったんだよね。「今はとにかく話し合うことが大切なんだよ、答えがなくても」ということを若い世代に伝えたくて。

英語の先生から社会教育の道に進路を変えた決定的な理由は、母の「からの巣症候群」があったんです。その時期に、私の母親は、そろそろ自分のところから娘が巣立ってしまうんじゃないかっていう感覚が凄くあったみたいで、子供が自分の元を離れるという意識が強すぎて、とても落ち込んじゃった時期があったのね。こういうケースを「からの巣症候群」というそうです。

今でも忘れないんだけど、「楽しみが無いから、あとは、自分は死に向かっていくだけだ」と言っていて、それですごくショックを受けました。そのときたまたま社会教育主事課程で実習に行くことがあって。公民館の活動で母親と同じくらいの年代の女性が集まってきて、楽しそうなところを見たとき、母とは全然表情が違うなと思いました。

私の母親も生きがいがないというけれど、彼女たちみたいにもっといきいきしてほしいなと思ったときに、私の母親みたいな女性って他にもいると思うから、社会教育ってそういった女性たちをいきいき復活させるような可能性があるんじゃないかなって単純に思っちゃって...。それで社会教育の道を目指したんです。

母親がその後どうなったか? それがね、ある日いきなり「やっぱり残りの人生は習い事とか楽しむことにしたから」とか言われたの! 私は、ぽかーんとしちゃったの。話をよく聞くと、同じ年代の同窓会で悩みを話したら、まわりの人に、自分が楽しめることをした方がいいよ、と言われて気を取り直したみたいです。

そしたら公民館のジャズダンスとかに行くようになって。自分が何を言っても相手にされなかっただろうけど、同級生、同じ経験をしてきた仲間と話すことで癒されてやる気が出てきたんだな、ああそうだったんだと思って、その後、研究のテーマを学習者同士の仲間の力に決めました。

大変でも、やりたいことを仕事に

就職するときは、どうしても社会教育をやりたかったので、安定も求めるなら本当は行政に入るしかないんだけど、行政に入ったからと言って社会教育課に必ず行けるわけでもないから...。それからもともと大学院の指導教官が「就職するために大学院に来たわけではない」という教え方だったこともあり、やるんだったら行政で募集する、非常勤の専門職として働きたいと思っていました。たとえ安定しなくともしっかりと講座の企画運営ができるので。
勤務地のこだわりは特になかったけど、大学院の指導教官が県内の社会教育関係者との信頼が強くて、自分に合ったところを紹介してもらって最初の就職先、とちぎ男女共同参画センターに決めました。

周りもどうして安定した方へ行かなかったのか信じられなかったみたいだけど、私はどうしても社会教育の道に進みたかったんだよね。でも、経済的にも不安定だったので、家族の協力や、周りの助けもあってやりたい仕事を続けられました。

宇大生へのメッセージ

大学院に行く前と大学院時代に、進路について、とても悩んだ時期がありました。社会教育って本当は自分に向いていないんじゃないかとか、やっぱり教員にした方がいいんじゃないのかとか。一生分悩んで、泣いてしまうこともありました。皆さんも悩まれることはいいんだけど、悩みながらちょっとでも関心のあるところに向かって歩いていくことが大事。私も悩みすぎて凄く暗くなってしまっていたんです。でもそれじゃだめだなと。

一所懸命自己分析しても大学で自分の適性とか興味が分からない人がいるとしたら、そして、不安に思っているのだとしたら、そんなの今は分からないよ、と言ってあげたい。大学で全ての人生が決まるわけじゃないし、大学も含め色んな人生を歩んで色んな人と出会って色んな体験を通して自分ってわかっていくと思うから。とりあえずどこかしら出てみて、何かしらやってみて!そこで考えればいいんだよってことを声を大にして伝えたいです。

インタビュー・執筆
布袋田早紀|農学部農業経済学科4年

桑島さんの自分のやりたいと思うことに真っすぐに向き合う姿勢がとてもかっこいいと思い、私もそういう働き方をしてみたいと思いました。そして社会教育の道に進むきっかけである「母のために」という気持ちが素敵だと思い、誰かのために何かしたい、困っている人のためになりたい、という人を思う気持ちが仕事をする上での大きな原動力、そして働き方を決める際のゆるぎない軸になるのでは、と感じました。

  • 東京-栃木は遠距離恋愛?
  • 保護猫カフェ「ラッキー」は “サード・プレイス”?!