栃木の農業の新しい可能性 栃木の農業の新しい可能性

超高齢化社会が迫っている日本において誰もが「人生の最終盤まで心安らかに過ごしたい」と願っており、高齢者が病気や人間関係に煩うことなく充実した楽しい日々を送れるような高齢者介護サービスの提供が重要な課題となっています。

近年、デイサービスなどの介護業界で、高齢者が自分らしく豊かに生きるための手段として“農業”を利用する例が増えています。高齢者向けサービス付き住宅を提供する栃木県の「ゆいまーる(注1)那須」も,農業を自然との対話を楽しむためのツールとして取り入れています。ゆいまーる那須がある栃木県那須郡は、都心からのアクセスが良く、酪農が盛んで、良質のお米や水があり、住みやすい里山です。このような地の利を活かし、老後の時間で農業に取り組み、自分で育てた野菜を使った食事を楽しむという魅力的な暮らしをプロデュースしています。このように高齢者介護に農業を取り入れるというアイデアは、農業が経済的な営みという側面だけではなく、「個人や家庭の暮らしに根ざした1つの要素であった」という現代社会において忘れ去られてしまった従来の価値観を再認識させてくれます。

私自身も、地方創生という旗印の下、高齢化や人口減少を食い止めようとあの手この手が尽くされている現状で、敢えて、増え続ける高齢者をターゲットとした介護を中心としたまちづくりができないかと考えています。人口減少で困っている地域と、介護とのマッチングを新たな人材獲得戦略にできないかと模索している段階です。自分の手で土に触れる農業体験を通じて、地方の自然を愛でることが、都会から地方に移住することを決断する新たな動機となる日が来るのかもしれません。

注1)“ゆいまーる”という単語は、沖縄の言葉で、“結い”から派生し、結びつきや助け合いを意味します。お互いに手を結びながら助け合っていこう、というメッセージが込められています。
文|COC+推進室 特任准教授 大西孝幸/農学担当 イラスト|教育学部美術教育 和良品美桜
  • vol.04|休学・起業、独自の道を進んだ、その心は 土橋優平さん
  • 地域の言葉と地域づくり