地域の言葉と地域づくり 地域の言葉と地域づくり

自転車がパンクしたので近所の自転車屋さんで修理してもらったことがあります。修理が終わって引き取るときに店の方から「タイヤが指で押ささらないくらいまで空気を入れてくださいね」と言われました。この「押ささる」「押ささらない」という表現、栃木以外では私も縁の深い北海道ぐらいでしか使われていません(むしろ、一般的には「北海道弁」として知られています)。当初私は、この方は北海道の方なのかと思って出身を尋ねてみたのですが、相手はなぜそう思われたかがわからない、といった様子でした。

多文化理解の第1歩は相手を理解しようとすることです。それには相手と「同じであること」を知る・「違うこと」を知る、の2段階があるといえます。この場合、栃木と北海道で同じ言い回しがあることを知った、ということが大切だと思われます。そうでなければ親近感を抱いてその方に話しかけることはなかったかもしれません。もちろんこのことは全員が同じ「標準語」(私はたまに冗談で「『標準語』はおかしい、『NHK日本語』というべきだ」と言ったりします)を話すべき、ということではありません。言葉だけではなく、風習や出身地、あるいは考え方など、同じでありながらも違いもあること、すなわち多様性を相互に認め合うことが地域や社会を豊かにしていくのではないでしょうか。

大学内にはいろいろな地域からの出身者がいます。もし地域づくりをやろうと考えているのであれば、まずは「同じこと」にはどのようなものがあるかを探してみるといいかもしれません。

文|地域デザイン科学部 准教授 若園雄志郎 イラスト|教育学部美術専攻 吉田夏希
  • vol.04|休学・起業、独自の道を進んだ、その心は 土橋優平さん
  • 栃木の農業の新しい可能性