とちぎの隠れた名産品、香り高き『ゆず』 とちぎの隠れた名産品、香り高き『ゆず』

道の駅が誕生してから13年が経ちますが、その機能の一つである「地域連携」がうまく働いており、どこの道の駅でも土着の野菜や名産品のショッピングが楽しめ、さらに地域に密着したイベントが実施されるなど、場所によっては半日〜1日楽しむことができる施設となっています。これも、千里眼級の洞察力を持った国土交通省のリーダーシップもさることながら、やはり、地元を愛し地域の活性化を真に願っている方々の想いの強さと実行力の賜だと思います。

道の駅の中で、近年、目を離せないのがグルメです。2016年から始まった「道-1グランプリ」は、年に一度の道の駅グルメの祭典であり、全国の道の駅(2018年4月現在:1145駅)の中から事前の選考により厳選された数十駅の看板グルメが一堂に会し、来場者の投票により王者を決定するものです。そこでなんと道-1グランプリ2016、2017、2018の三連覇の偉業を成し遂げているのが、栃木県初の道の駅「もてぎ」にある十石屋の『ゆず塩ら〜めん』(写真1)です。

写真1:道の駅もてぎ「ゆず塩ら〜めん」

写真1:道の駅もてぎ「ゆず塩ら〜めん」

写真2:真岡鐵道を走るSL

写真2:真岡鐵道を走るSL

この道の駅「もてぎ」は、妻の実家のすぐ近くということもあり、息子と一緒に、週末に走る真岡鐵道のSLの写真(写真2)を撮りによく立ち寄ります。道の駅「もてぎ」に行くと、妻と息子は「栃木人はイチゴだ!」といわんばかりに、完熟苺とフレッシュミルクアイスのジェラート「おとめミルク」に直行するのですが、ラーメンをこよなく愛し、味音痴にもかかわらずラーメンフリークを自称している私は、まず『ゆず塩ら〜めん』に向かいます。
『ゆず塩ら〜めん』は、2012年に発売してまもなく雑誌「女性自身」の「もう一度食べたい道の駅グルメ」No.1に輝いて以来、様々なメディアに取り上げられ、ずっと気になっており、2015年3月にようやく念願叶って実食することができました。

写真1の通り、清湯スープにたっぷりの野菜、そして、アクセントとしてゆずの皮の摺りおろしが載っています。まずは一口、スープを飲むと爽やかなゆずの香りが口の中全体に拡がります。さすが手搾り果汁、苦みも薬臭さも全くなくとてもフレッシュです。それでいて、鶏と豚の出汁が効いているので後味もしっかりしています。次いで麺を一口、若干柔らかめの細麺はさっぱりとしたスープにぴったり合っています。そして、半分くらい食べ進んだところで、テーブルに置いてあるオリジナルの無添加ゆず酢をかけると忘れかけていた爽やかさが再び甦ります。なんとも素晴らしい完成度で、道の駅グルメのクオリティの高さを実感できる一品だと思います。そして最後に、妻と息子に負けないくらい栃木愛の深い私は食後のジェラート「おとめミルク」も決して忘れません。

さて、この「ゆず」は、飛鳥時代〜奈良時代に中国から朝鮮を経て伝来したといわれています。日本では、農林水産省の統計情報によれば、1960年代までは埼玉が主要な産地だったようですが、1970年以降は高知や徳島などが台頭し、今日では四国地方(高知、徳島、愛媛)の3県で国産ゆずの8割近くを占めています。最新の確定データ(平成27年度特産果樹生産動態等調査)では、収穫量1位は高知(12,125t)、2位は徳島(3,453t)、3位は愛媛(3,029t)であり、栃木は16位(61t)となっています。

栃木で有名なゆず農家の一つに宇都宮の床井柚子園(写真3)があります。床井柚子園は1964年に先代の床井忠雄さんが畑に100本の苗木を植栽したところから始まり、幾度の試練を乗り越えながら10年後の1974年に待望の初出荷を果たしています。現在では、2代目の床井光雄さんが代表を務め、約250本の木を所有する傍ら、宇都宮市内のゆず農家15軒と「宇都宮ゆず組合」を結成し「宮ゆず」として約1,000本の木から年間20tの出荷体制を整えているそうです。床井光雄さんのお話によると、ゆずが栽培されている地域は、北緯34度(高知、徳島、愛媛など)〜36度(越生、宇都宮、茂木など)に集中しており、北緯36度の北方のゆずは、北緯34度の南方のものと比べて果汁は少ないが、肉質が厚く香りが高いという特長があり、特に、新里地区のゆずは、きれいな果皮の品質の良さから、柚釜や柚ジャム等に向いているそうです。実際に、今年の夏は異常な暑さで手入れが難しかったため、果皮が全体的に黒ずんだものが多く出回っている中、手間暇を惜しみなく注がれ育てられた床井柚子園のゆずはとても綺麗です(写真4)。

写真3:床井柚子園

写真3:床井柚子園

写真4:床井柚子園のゆず

写真4:床井柚子園のゆず

現在、国内では、先駆者である四国地方のゆずが、ブランド志向の高い日本人には重宝されており、北方のゆずは苦戦を強いられているそうです。しかしながら、ブランドにとらわれていない海外の著名レストランの目利きの料理人などから北方のゆずは、その香りの高さや味わいの深さから注目を浴びており、直接買い付けに来るケースも多くあるそうです。日本国内よりも先に世界で栃木のゆずが評価される日が来るのもそれほど遠くはない気がします。これぞまさに、栃木の隠れた名産品ですね。

文・写真|工学研究科 長谷川光司
イラスト|教育学部美術専攻 田宮知羽
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