栃木弁の面白さ 栃木弁の面白さ

栃木県は印象が薄いとよく言われる。日光はよく知っていても、栃木県にあるの?という人もいるくらいである。この印象の薄さには、自分の意見を明確に述べることも、目立つことも控えるという県民性も関連しているかもしれない。そういう県でありながら、よく観察するといろいろ引き付けられる面がある。言葉もその一例である。

「雨」と「飴」はどちらも、高低のピッチで発音しても、低高で発音しても基本的に構わない(足利地域は渡良瀬川のために東京型アクセント)。「橋の端を箸を持って渡る」を標準語で発音しようとすると、栃木県出身の私には、「橋」「端」「箸」のアクセント型をアクセント辞典で一つ一つ調べ覚えなければならず、外国語を学ぶような必要に迫られた。イントネーションにも特徴があり、疑問文でなくても文末を上げる傾向がある。聞きなれない人には奇異に聞こえるだろうが、これには文全体を和らげる機能があり、人間関係を円滑にするために有効活用されているのではと思われる。英語でも若者を中心に、平叙文なのに文末を上げる傾向が出てきた。栃木弁と英語に面白い共通項があると感じるのは私だけだろうか。

語彙にも面白い特徴がある。子供の時、祖母が夕方に「こわい、こわい」と言っていたが、その意味が分かるまで,何か恐ろしい物でもあるのかと周りを見たものだった。親戚の者に「せいふるにへってへげすっぺ」(発音記号を使わないと正確な表記はもちろん無理)は分かるか?と言われた時、「風呂に入って髭を剃ろう」という意味だと想像もできなかった。「だいじ」=「大丈夫」も県外の人には不思議に感じるだろう。栃木県人には「イ」と「エ」の区別が付かない人がいるが、両者の母音とも、「イ」と「エ」の中間に位置する英語のthisの母音に近いからかもしれない。日本人はこの英語の母音の発音を苦手としているが、栃木県人のこの特徴をうまく活用すれば、英語のこの母音の発音は栃木県人が日本一になるかもしれない。

このように、栃木県の言葉をよく観察すると、いろいろな面白い特徴が見えてくる。他県出身の学生さんには、自分の方言との違いをできるだけたくさん気付いてもらいたい。県内出身の学生さんには、標準語と栃木弁のバイレクタル(二方言話者)になり、栃木弁を次の世代に大切に伝えてもらいたいと考える。

文|国際学部 教授 湯澤伸夫 イラスト|教育学部総合人間形成課程 田宮知羽
  • つなぐ、ひと、自然「地元には、伝えるべき魅力がある」 秋元信彦さん