那須へ〜牧場をめぐる休日ドライブのススメ〜 那須へ〜牧場をめぐる休日ドライブのススメ〜

栃木県は北海道に次ぐ全国第2位の生乳(せいにゅう 注1)生産県です。それは、県北部に那須(扇状地の那須野ヶ原と、丘陵地の那須高原)という、本州有数の酪農地域をかかえているからに他なりません。那須塩原市と那須町の2市町だけで、県全体の6割近くを占める3万1千7百頭の乳牛が飼われています(2016年2月現在)。

この一帯は、昭和初期までは馬産地でした。なぜ、日本を代表する酪農地域へ変貌を遂げたのでしょう。その背景には、標高の高い地区に戦後まもなく開拓地が多く設けられたことがあります。礫混じりの火山灰土壌、水利の悪さ、冷涼な気候といった穀類・豆類の栽培には不向きな条件のもとで、入植者が希望を託したのが酪農でした(注2)。また、東京という大市場へのアクセスの良さから、那須は飲用牛乳生産に特化するようになります。大規模な酪農家が多い那須塩原市の日の出・青木・戸田、那須町の千振・大谷などの地区では、那須連山をバックに青々とかがやく牧草地や、整然と並ぶ牧草ロールを見ることができます。

高原リゾートを謳う那須高原では、地元の観光牧場や酪農家の自家製造による、こだわりの牛乳・チーズ・ジェラートなどを味わえることも、大きな魅力です。原料乳がジャージー種、ガンジー種といったレアな牛たちのものもあるので、お気に入りの一品を見つけてください。

一方、那須が肉牛の産地でもあることは、あまり知られていません。複数のレストランやカフェが提供するランチメニュー「なすべん」では、「那須和牛」(注3)を手頃な値段で味わえます。ただ、この地域の肉牛農家は、和牛(黒毛和種)の母牛を飼って子牛を産ませる繁殖経営が主流です。那須で産まれた和牛の子牛はやがて、県内の肥育地域はもとより、「米沢牛」、「飛騨牛」、「神戸ビーフ」といった名立たる銘柄牛肉の産地へと旅立っていきます。

そして、この子牛生産に、実は多くの酪農家もかかわっています。一つには、酪農家が乳牛と和牛の母牛の両方を飼う、乳肉複合経営によって、もう一つは、和牛農家で採卵した母牛の受精卵を、酪農家の乳牛に移植し優良な血統の和牛子牛を効率よく生産する、受精卵移植事業によってです。自然との調和をはかりつつ、高い技術力で乳肉の安全性・良質性を追究する―、そんな牧場に出会える那須へ、ぜひ出かけてみませんか。

那須塩原市の酪農家

那須岳と牧草地(那須町)

注1)搾ったままで加工する前の牛の乳。
注2)国の酪農振興の重要拠点である那須山麓集約酪農地域に指定(1954年)されたことにより、那須では乳牛を飼う農家が急増した。
注3)JAなすの(大田原市、那須塩原市、那須町)管内で生産・販売される和牛肉。
文|教育学部 准教授 松村啓子 イラスト|教育学部美術教育 吉田夏希
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